同じ靴を履いてる

生活について

私服と青春の味と春の嵐

と、外に出てみてなんだ、あんまり雨脚も強くないし寒くもないってんで、永福町まで歩いて電車に乗り吉祥寺へ。特に予定もなく、何となく。雨天のせいか、或いはまだ大体の店が開店前で、街が動き出していないからか人通りはまばら。ざばら。周辺をうろうろしているとさすがに靴もずくずくになってくる。久しぶりに来たような気もしたが、年明け早々に一度訪れているのだからそこまででもない。9時半すぎ、信号待ち、青になると多くの人が東急デパートの方に向かってゆく。まだ営業前なのに、こんな時間から並ぶものなのかと思っていたら皆んな、従業員入口の方へ吸い込まれて行く。そういうことね〜って、そういうことね。

これから仕事に向かう人や、反対に仕事を終えてこれから家へ向かう人の私服というのは、妙に色っぽく映るというか、あの、普段制服姿しか知らない同級生のプライベートみたいな感じで、何か懐かしくて、少し照れく、浮ついた気持ちにさせられてしまう。あの日を思い浮かべているのだろうか。とはいえそのあの日がどのあの日なのかは定かではなく、或いはそんなあの日など存在せず、ただイデア界のあの日を想起しているに過ぎないのかもしれない。皆んなが共有できる青春の一形態として。

甘酸っぱい青春であったり、しょっぱい青春であったり、青春にはいろんな味があるらしい。自分の中高時代を思い返してみて、あれは何味だったのだろうかと思う。自分では判断しかねるのだが、人に味わってもらえるような類のものでもないので、なんかよくわからないフレーバーとしてひとつ。味はすごいしたような気がするのだが、それもどうだか。

茶店で少し休憩して日曜天国を聞きながらその東急デパートに入る。何となくニトリへ行き、何となく掃除機を買った。何となくで買うものでもないだろ、とも思ったが、何となく買わないとこのままずっと掃除機なんか買わないので、まあ。荷物も抱えてしまったし、このまま散歩を続けるような天候でもないので駅の方へ向かい、どういうルートで帰ろうか迷ったけれど、結局来た道を戻る形で永福町まで電車、駅前のラーメン屋が並んでなかったら食って帰ろうかなって思ったら行列で、そのまま帰って適当に昼食を済ます。外が轟々と鳴いている。いいタイミングで帰ったのかもしれない。

せっかくだから、という気持ちで掃除機をかける。コードレス式のやつだったが、最初から充電されていてありがてえ。開けたら即行で使いたいので。こまめに使っていけたなら。

春の嵐。毛布をしまっていいものか悩む。小説読みたいなって、本屋に行こうとしたけれど、本を置くスペースのことを考えると、じゃあいいやという気持ちになってしまうのだからもったいない。Kindleがある。充電が切れている。直近の芥川賞でそこそこ話題になった『推し、燃ゆ』を読みたい。読め。読む。