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テン年代の映画ベスト10 日本映画編

すでに2021年、チョー今更感があるものの、自分なりにまとめたかったということもあり表題の件、日本映画、海外映画、国内外問わずアニメ映画、この3つのカテゴリーでそれぞれトップ10を。明確なルールは設けてませんが、2010年代に日本で公開された新作の劇場映画が対象。

ということで最初は日本映画から。予告編を貼っておきますので、興味があれば見ていただき、何らかの方法で映画を鑑賞していただけますと幸いです。選出に労力が掛かりすぎたこともあり気力が残っておらず、ひとこと短評もままならない状態ですが・・・。

なお、基本的にネタバレはなしです。

 

 

10位 葛城事件(2016年)

 

いきなり重て〜。実際の無差別殺人事件をベースに作られた映画で、事件前後のその家族の様子を描く今作。とにもかくにも三浦友和のヤバイ親父っぷりが最高。ただ、ここまで極端では無いにせよ、こういう時代に合わせてアップグレードできない人間というのは一定数いるはずで。キャッチコピーにもなっている「俺が一体、何をした」というのは、三浦友和演じる親父側からすれば至極真っ当な主張であるというのもまた。

2010年代は劇作家、演出家からの映画界参入も多く目立ち、その中から何かしら入れたいという思いもあって。

 

 

9位 SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者(2012年)


 

 

連続シリーズものの三作目。一作目では主人公の二人組みと同じグループだったマイティが、二人の才能や芽の出ようの無い埼玉のド田舎を見限り、上京してからを描く今作。このシリーズのファンであるため大目に見てしまっている部分はあるだろうが、それでも。映画の終盤、袂を分かった彼らが再会する現場、シチュエーション、立場の違い、あのシーンは震えちゃうよね〜。

 

 

8位 クリーピー 偽りの隣人(2016年)

 

ヘンな映画だなあオイ。でもその奇妙さがメチャクチャ気持ちいいという黒沢清監督作。いわゆる黒沢演出というか、陰影の使い方やどんどん深みに嵌っていく主人公、それから何より香川照之。「犬、好きなんですかぁ・・・犬、いいですよねえ・・・」をはじめ、香川照之の異様さがちょっと笑っちゃうレベル。しかしメチャクチャ怖いというバランス。「映画を観てる感」にどっぷり浸れる2時間。主演女優の竹内結子については、もう何も言いますまい。ただただ残念としか。言ってんじゃん。

 

 

7位 桐島、部活やめるってよ(2012年)



高校時代から遠く離れて。でも、この映画を見たときは高校を卒業してからそう時間もたっておらず。時の流れを感じますなあ。こういうのは青春映画、と呼ぶのだろうか。桐島の不在を巡るクラスメイト各々の人間模様。白眉なのは東出昌大。「部活なんて将来の役にも立たないし、一生懸命やっても意味ない」「できるやつは何でもできるし、できない奴は何にもできない」、そういう人間への復讐と、そういう人間に対しての理解も映画の中で描かれているんだから素晴らしい。ちなみに松岡茉優爆誕映画でもある。

 

 

6位 ヒメアノ〜ル(2016年)



吉田恵輔監督もテン年代からの活躍が目覚ましい監督で、『銀の匙』『愛しのアイリーン』、そして本作と漫画原作モノも多く撮っていて、そのいずれもハイレベルなんだからすごい。そして本作、森田お前、どうして!!!!!って言う。言うね。

それから映画の構造自体がすごく良くて、回想シーンの挿し込み方とかも本当にスマートで見やすく、それから何より森田剛森田剛演じる森田。森田の怪演。それだけで十分に価値のある一作。

 

 

5位 ディストラクション・ベイビーズ(2016年)

 

主演の柳楽優弥はじめ、菅田将暉小松菜奈池松壮亮村上虹郎北村匠海と、この規模の映画では考えられないほどのメンツ。まあこのころの村上虹郎北村匠海あたりは出たてだったような気もするが。何より際立っているのは柳楽優弥で、演技とかそういう次元の話ではなく、彼が画面に映っているだけでサマになってしまう顔面力と佇まい。平成の菅原文太とでも言えばいいのか、あの画面の支配力と存在感は凄まじい。

ヤバイ奴はヤバイ奴だからヤバイ奴。暴力は暴力だから暴力。それ以上でも以下でもなく、それを意味と規定と解釈で切り刻む事でしか理解し得ない人間に対する圧倒的な挑発がある。そして、ただ挑発をするだけでなく「意味を与えられた暴力」に関しても映画の中でフォローできている点もすごいところ。

 

 

4位 横道世之介(2013年)

 

ようやくストレートに心温まる、それつまりハートウォーミング、そういう映画が。舞台は1980年代後半、その当時の大学生たちの生活が描かれているのだけど、冒頭で心掴まれてしまう。え、いやこれどうやって撮影したの?っていう。全編を通じての空気感が本当に、もうメチャクチャいい意味でぬるま湯に浸かっているようで。でも大学生ったら、ぬるま湯に浸かったような生活なんだし、そういうある種の味のようなものが映画からも出ているのかもしれない。

ストーリーに関してはもう何も言わないので、何かふとした時に見てもらえたら、何かふとした時がグッと良い感じになることは間違いなし。僕自身、何かふっとしたときにこの映画をまた見たくなる。

以下、トップ3の前に番外編を1本。

 

 

番外編 ソラニン(2010年)

 

トップ10にいれるのはどうか、ということで番外編として。

トップ10というのは数々の入れたかったけど入れられなかった、そういう映画の犠牲のもとで成り立っているのであるから、番外編なんかやりはじめちゃったら本末転倒、ずるいずるい、それはまったくその通りなのだけどこれ、当時好きだった子に勧められて見たから、という理由一点での選出なんで許してください。家でレンタルDVDで見たのだけど、映画の途中で寝てしまって、そのまま朝を迎えてしまった。映画を見ながら眠るってのは幸せなもんで、思い出の供養としてここに置いておきます。

 

 

3位 海街diary(2015年)

 

是枝監督作。万引き家族がストレートにそういう映画だったわけですが、是枝監督の作品では「家族」という共同体に対して、それから「家族になる」ということについては、そのキャリアの中で繰り返し用いられるモチーフであり、本作は映画の脚本や、役者陣の演技を含む演出に、家族というテーマが一番綺麗にフィットした作品だったように思う。もちろん本作以外、例えば先に挙げた万引き家族のほか、そして父になる海よりもまだ深く等も素晴らしい映画ではあったのだけど、やっぱ本作は「広瀬すず爆誕!」(錦鯉のつかみのテンションで発音してほしい)の要素も含まれている点も見逃せない。実際、この映画の主演をキッカケにその後はもう、ちはやふる等人気作の主演連発で。まあ、遅かれ早かれだったのだろうけど。

この手のヒューマンドラマを映画にした場合、妙にいろいろなエピソードを絡めてしまい、結果的にフォローが雑になってしまうケースは少なくないのだけど、本作はそのあたりも本当にうまいです。

 

 

2位 貞子 vs 伽倻子(2016年)

 

「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ」

2015年末に映画館で見た特報。それを見てどれほど公開を楽しみに待ったか。そして、公開された映画を見て、その期待を大きく上回ってきてくれたことに対する興奮と感謝。白石晃士監督作としては、以前書いた平成の映画ベスト10では『オカルト』を挙げたけれど、公開規模の比較的大きい商業ベースの映画では本作が圧倒的に好きだ。

ホラーに関わる様々な既視感のある設定や人物がこれでもかとごった煮され、それらが喧嘩し合わずにお互いの味を引き出しているのは料理人の腕。ともすればコメディーと取られてもおかしくないようなシーンも多くあるのだが、映画を見終わったあとはしっかりホラー映画を見た感覚にさせてくれるし、しっかり怖いところは怖い。とにかく最高な一作。

 

 

1位 宮本から君へ(2019年)

 

同じ監督の作品2作入れるのはって気持ちもあるのだけど、この映画を観たタイミングとかも含めて、こういう順位になってしまった。監督はディストラクション・ベイビーズ真利子哲也監督。やっぱりあの監督のバイオレンス描写が好きなんだろうな僕は。

まあ、救われてしまった。とにかくこの映画の主人公の宮本は最低で。最低だけど最高とか、そういうことではなく最低。ネタバレをしないようにしている以上書けないが、映画の中で起こるある事件に対しての対応とか、マジでお前何やってんだ感もあるのだけど、でもその最低さを突き抜けたところに、もしかしたらその最低さが人を救うことがあるのかもしれないという結論が、当時(おそらく今もだろうけど)本当に救われてしまった。しまった、というのは、それが悔しいというニュアンスもある。しかしまあ、それでも。

役者陣の凄まじさとかはもう語るまでもなく。漫画も読んでいるが、漫画が時系列通りに話が進んでいくことに対し、映画についてはすべてが一旦落着している現在と、渦中である過去を行ったり来たりさせる演出を採用していて、ここが本当に、どハマりしている。時系列通りに話を進めたらここまでの傑作にはならなかったことだけは断言できるし、ここは監督と脚本の偉大な功績。

映画館の雰囲気もまた良くて。特に2回目を観に行った時、大入りの会場で啜り泣きと笑い声が一体になっていて、そういう映画だよなと思った。

 

 

 

以上、日本映画のランキングでした。大したこと書いてないのにすごく疲れた。もちろんのこと、あれも入れたかった、これも入れたかった、なんでこれが入ってないのって映画はある。あるけどそれをやっちゃったら企画として終いなので何も言いません。

次回は海外映画編かアニメ映画編を近日中にあげようと思います。