同じ靴を履いてる

生活について

忘れ物と交番と西暦

財布を忘れたことを忘れてしまい、運悪く電子マネーの使用できない駐輪場に自転車を停めてしまったのでとりあえず金を得に交番へ行く。自転車が取り出せないことを認めたのち、じゃあ交番だなと思い至るまで数秒も要さなかったことに、これまでの人生で培った忘れ物への対応力の真価が発揮されていたように思う。忘れ物と失くし物が異様に多い子供だったし、青年だったし、そのまんま大人になってる。必要なものは家に忘れ、どこかへ行けば何かを失くし、しかし忘れ物や失くし物を減らそうという努力は続かず、むしろ何か忘れてしまった時の対応力の方に努力値を振り切ったことにより、忘れ物は一向に減らない代わりに、大事なものを忘れた際にあまり焦らなくなった。例えば飲食店で会計時財布を持っていないことに気付くとき。どうやら世間一般に会計時に金が無いなどというのは大変に恥ずべき状況であるらしく、それはそれは焦心させられる事案であるらしいのだが、そのような事態など日常茶飯事である私くらいになると、まったく焦らずにこちらの電話番号を伝え荷物等を担保に財布を取りに戻り金を収める、という一連をごく自然に、スムーズに、汗一つかかずに実行することができ、これは忘れ物への対応力に努力値を振り切った賜物にほかならない。だって忘れちゃうんだからしょうがないじゃ〜んの開き直りの果てがこう。マルイ地下駐輪場からまっすぐ交番へ。目的を持った人間のあゆみ。ここ最近で一番力強い歩様。なんなら幾分興奮している。不測の事態というのは時に、却って人に快感を与えたりする作用があったりなかったり、ガラガラガラァなんつって引き戸、すみませんがぁ〜なんつって困った声色。

交番は基本的に、よほどの緊急事態等でなければ人に金は貸さない。だから結局、警官から個人的にお金を頂戴することになる場合がほとんどであるため、とにかく平、平にお願い、哀願、お恵みくだせえの態度で臨まなければならない。間違っても手前ら公務員の給料は我々の納めた税金から云々などという態度で門を叩いてはいけないのである。

そして100円をいただく。ありがてえ。これで3人の警官からお金を頂戴したことになる。かたじけねえ。いつの日か、あのとき助けていただいた者です、で始まる鶴の恩返しスタイルで再びお目にかかりたいよな。機織れるようにしておきますので。

土曜日。19時過ぎ。土曜出勤日だがテレワークなのでまったくやる気も起きず外部からの連絡も無いため友人から勧めを受けた『三体』を読みながらダラダラ競馬をするなど。三浦春馬が亡くなる。無言。SFを読んでいるせいだろうか、現在がまだ西暦で2020年しか経っていないことに文明の若さを感じる。その西暦の100分の1以上が自分の人生の時間として流れていることを改めて思い、これからもっともっと世の中が良くなったり悪くなったりすることを想像して、少しだけ気持ちが晴れた。明日はいいことあるな。日曜天国も聴けるし。