同じ靴を履いてる

生活について

森七菜ちゃんとライアー×ライアーとアングスト

友人の家に空気階段の単独ライブの配信を見に行って帰途、多少の空腹感と、酒を飲んでいたせいもあってか、塩分と炭水化物への欲求を感じ、最寄りのコンビニでカップ麺を買い、それを食って寝る。朝起きると腹が厳しい感じと、身体中の浮腫みが厳しい感じがあり、やっぱああいう場面は我慢しなきゃダメよな、と思いつつ8時前、何かすることもないので、何かすることもないことを理由に朝メシ。そんなに腹、減ってねえのだけどなあ、なんて目玉焼き二つに味噌汁、炊いた残りの白米を平らげ、さても。今週公開の映画は何か。ニンテンドースイッチバブルが一旦落ち着いている最近、改めて映画観賞に対するモチベーションがコロナ禍以前の感じに戻ってきており、じゃあ久しぶりに行、行映画、やっちゃうか。そうやって12時15分からの『ライアー×ライアー』を予約。少女漫画原作で、先週『すばらしき世界』を観賞した際に予告編を確認し、かなり香ばしい感じがしたので。行映画の雰囲気がすごかったので。それからやっぱり森七菜ちゃん。『天気の子』でその人を認識し、『地獄少女』で良い役者だなあと感心し、『ラストレター』でぶん殴られちゃってからはファンなので。ナイツのちゃきちゃき大放送を聴きながら、腹ごなしにって歩いてトーホーシネマズ新宿へ。

雑な感じのあらすじを書くと、大学生のミナト(森七菜)は友人の手伝いで撮影モデルを頼まれ、金髪ギャル風女子高生の格好で渋谷の街を歩いていると、同居しているいけ好かない血縁関係のない弟、トオル村松北斗)とばったり会ってしまい、こんな格好して街を歩いているなんて恥ずかしいワ! なんつって姉とは別人を騙ったところすっかり弟もその嘘を信じてしまっている様子、どころか猛烈なアプローチを受けることとなり……ていう、嘘から始まるラブストーリーってな具合。

これがもう。結構色々と映画は観てきているし、少女漫画原作の恋愛映画とかも一応それなりにチェックしている方なのだけど、これがもう。圧倒的な行映画。行の中の行。行の行の行。冒頭1分の段階で、うわ、やべえ感じあるな、という嫌な予感はあったものの、本当にそれは序の口。およそ2時間の映画体験の中で、ここまで精神を削られたのは久々だった。すごい。本当に観てよかった。

大体多くの映画では、共有できる・共感できる登場人物って出てくるモノですが、この映画、マジに全員サイコパス! みんな頭イカれてる! ここまで誰の行動原理も理解できないというか、あまりに自分の想像力や倫理観の範疇外すぎて、上映時間中延々と、休む間も無く、メンタルを糸鋸で刻まれ続けるという、ここまでくると行というより拷問に近い仕打ち。しかしその割はに客入りも良いし、隣に座っている女性なんかも結構感動している風の空気感も出ているものだから、途中から「これは俺がおかしいのか……?」という、俺だけオーウェル1984状態で、危うく2+2=5であると答えかねないようなところまで追い込まれてしまった、というのは半分冗談。

実際、登場人物の誰にも拠り所なし、ということがある程度理解できてからは、結構笑えてくるところもある。この笑いはまあ、自衛という意味合いも多分に含んでいる気もしなくはないが。昨年2020年、実際にあった猟奇殺人を描いたオーストリアの映画『アングスト』がリバイバル上映でかかっていたが、この込み上げてくる笑いはアングストの時に感じた笑いに近い。猟奇殺人者の行動原理が理解できずに笑ってしまうように、森七菜ちゃんの言動のバグりっぷりに笑ってしまうし、彼女を取り巻く面々のバグりっぷりにも笑ってしまう。そんなバグった方々が、いくら血縁がないとは言え、姉弟での恋愛ってどうなの、っていう倫理的にセンシティブな問題について突っ込むことになるのだから、いったい何層構造になっているんだこれは。

散々に言ってますが、結局いろんな意味でめちゃくちゃおすすめだし、せっかくこれを読んでいただけたなら何かの縁だと思って映画館に確認しに行って欲しい。飛ぶぞ。