同じ靴を履いてる

生活について

赤坂とコインランドリーと向井秀徳

こう、雨天が続いていて土曜。台風が来るぞって。もう来てんだって。それでもまあ涼しいし、つかいよいよもって肌寒いし、半袖のTシャツにパタゴニアのフリースでちょうどいい感じ。靴は濡れてもいい靴で外へ。ナイツのちゃきちゃき大放送を聞きながら、さてどこ行こうかって、せっかくだし挨拶しときますかTBS、そうしますかって丸ノ内線赤坂見附駅で下車し、赤坂方面へ足を運ぶ。久しぶり。

雨脚は弱まったり強まったり。風が強くないのが幸いではあるが、しばらく歩くと靴はずくずくに濡れて気持ちが悪い。とはいえ雨天のメリットもあり、まず人が少ない。これがいい。コロナウイルスの影響も少なからずあるのかもしれないが今日に限っては雨のせいだろう。おなじみ五丁目の心臓破りの坂を登り、さてもう目的は果たしてしまったわけで、こっからは目的なしのあゆみ。それにしても市井の皆様はこう、単純なご挨拶という目的でその場に赴いたりするものなのだろうか。何を買うわけでも、何を食すわけでも、誰に会うわけでも、誰を詣でるわけでもなく、ただ彼の地に趣き、さて趣きましたといって目的が達成されるという外出を。時間の無駄と言って一蹴されても仕方がないような時間。私などは無駄を無駄以外の言語へ翻訳することができるという、ある意味哀しい機能が備わっているので、むしろ積極的に、徒らに、徒然なるままに、徒時に身を投じてしまうのですがはて皆様におかれましては。徒時に身を投じるってラッキーダジャレも飛び出しちゃって今日は調子がいい。いや悪いのか。そうやってそう、赤坂でもともと無いような目的を果たしたのち、雨天で気も進まない中わざわざ外に出たのだからこのまま帰るというのも勿体無いので、靴はずくずくだけれどこのままテキトーに散歩しちゃろうつって、赤坂から乃木坂、乃木神社は無視して青山霊園を突き抜けて外苑、神宮球場にもご挨拶して信濃町外苑東通りを北上し四谷三丁目の駅で丸ノ内線に乗って帰宅。とにかく人がいなくていい。特に外苑なんか、こうまで人の気配がしないかと言った具合で、本当の散歩日和はもしかすると雨なのかもしれない。いやしかし晴れのほうが歩きやすいし、気持ち的にも明るくなるし、晴れていて人もいなければ一番いいのだが、なかなかそういうわけにもいかないのは本件だけに限った話じゃ無い。

それにしてもこうまで雨が続くと洗濯物が乾かせないので困ってしまう。日付変わって日曜の朝。空は雲に覆われていて、天気予報をみると一日曇り。これでは溜まった洗濯物を一日で乾かすのは困難だが、これ以上溜めることもできない感じになっている感じが洗濯機内から感じられるため、仕方ないのでコインランドリーで乾燥機にかけようと思い携帯で位置を調べる。新居に移ってからは一度も利用したことがないし、そもそもコインランドリー自体初? なんか旅行とかのときにホテルが管理しているコインランドリーは使用したことがあるのような記憶はあるが、少なくとも日々の生活の中でコインランドリーを使用したことがない。そうして調べてみると比較的近所に3件ほどがヒットし、一番近いところは歩いて3、4分程度だろうか、交差点を挟んで向こう側の路地に入った箇所にあるのだが、インターネットにて外観、および内観を確認したところ、そこだけ魔界の領土なのかというほど気味の悪い暗さを湛えており、万が一、魔の者に襲われないとも限らないのでここはパスして候補の2番目、歩いて7、8分程度のところにあるコインランドリーを確認したところ、こちらは浮世の施設と思われる風貌でそれはよいのであるが、隠しきれない古感(いにしえかん)が端々に感じられ、無論これはこれで風情があってをかし、と言えなくもないものの、初と思われるコインランドリー経験、なるべくなら若いマシンとまぐわいたいというのが本音、年増の良さがわかるのはある程度経験を積んでからよなって一時保留し3番目、徒歩10分程度のところにあるそこがオープンしたてのフレッシュな外見、さらには無料にてコーヒーを喫することも可能という若さと気配りを兼ね備えた実に良い娘で、一目見て育ちの良さがわかる奥ゆかしさがありながらお転婆なところもあり、好きな映画は『バックトゥザフューチャー』と『ぐるりのこと』、好きなお笑い芸人はチョコレートプラネットとのことで、ああ俺この娘にします、この娘がいいですと、自転車のカゴに収まりきらない洗い終えた洗濯物を手で押さえながら彼女のもとへ。もう少しで彼女に会えるのだと思うとペダルを踏む足も軽い。そうして彼女、乾かしたねえ。乾かした。やっぱり乾かすんだよねえ。

彼女が衣類を乾かしている間、家に戻る気にもなれずかと言ってどこへいく用もないのでその辺を自転車でフラフラしていたら、信号待ちの際、向かいで自転車にまたがる男が向井秀徳で、左脳から発せられる「向かいにいる向井秀徳」というダジャレに右脳がややウケするなど。ナンバーガールZAZEN BOYSもアルバム一枚ずつくらいは聞いたものの、どっぷりハマったわけでもなく、どちらかというと「グループ魂のゲストの人」という印象の強い私にはもったいない邂逅だった。帰り途、晴れ間。これだったら外干しできたじゃん。休日。首の発疹も治らず。