映画『咲 -Saki-』感想
人気原作漫画の実写化というワードに弱い。その原作を知っているといないとに拘らず、極力観に行くようにしている。多分に恐いもの見たさ、という感覚はあるが、しかし何か向こう側、俺の知らない世界を見せてくれるんじゃないか、という期待感も大きい。さてこの度は、という気持ちで池袋シネマロサ、実写版『咲 -Saki-』を観に行く。
まず原作漫画である『咲 -Saki-』と自分との関わりから少々。
最初にその作品を知ったのは高校二年の時で、丁度自分が麻雀を覚えた時と重なる。なんとなくコンビニで立ち読みしていたヤングガンガンの頁を捲りながら、うおっ可愛い女の子が麻雀を打っていて、良さ、ああざす。ところでヤングガンガンってすごい響きですね。ガンガンって。ガンガンってことはないだろ。剰え枕にヤング。すげえな。ヤングガンガン。
初見の感想。いま風の萌えキャラに麻雀、この漫画売れるだろうなと思った。インディーズバンドオタクのような気持ち悪さを認めつつ。つか実際売れていた。実際売れていたのでそれから間もなくアニメ化されていた。これも覚えている。見てた、と言えば嘘になるような態度ではあったものの、確か日曜の深夜二時くらいからテレ東で放映していて、そのアニメを流し見しながら明日月曜じゃねえかの舞を舞っていたことを覚えている。その舞を覚えているだけで、アニメに関する記憶はほぼない。
畢竟するに『咲 -Saki-』に関する知識と言えば、高校のときに数頁流し読んだ漫画と、流しっぱなしになって録に見ていないテレビアニメ一期程度のものでしかなく、今回の映画の前に放映していたらしい実写版テレビドラマは一話も見ていないのでほぼ素寒貧、何の予備知識もない状態で臨む形になった。
つーわけで以下、実写版『咲 -Saki-』の感想。ネタバレ含みます。
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あらすじ
全国高校麻雀大会・長野県予選、清澄高校・龍門渕高校・風越女子高校・鶴賀学園の4校が激突する決勝戦。
それは各校5人の雀士が総合点を競い、全国大会=インターハイへの切符を手に入れようとする頂上決戦でもある。
ここに駒を進めた4校の少女たちは、それぞれの思いを胸に、決戦の場に向かう。
ここで負けたら、大好きな先輩は引退してしまう……。
仲間と一緒にもっと麻雀を楽しみたい……。あの娘にだけは負けたくない……。
さまざまな思いが交錯する中、初の決勝進出を果たした清澄高校の1年生大将・宮永咲(浜辺美波)は全国大会出場を賭けた戦いに向かおうとしていた。
麻雀嫌いだった咲に麻雀の楽しさを思い出させてくれた、全国中学生麻雀大会チャンピオン・原村和(浅川梨奈)、タコス好きで東場に異常に強い片岡優希(廣田あいか)、学生議会長兼麻雀部部長の竹井久(古畑星夏)、雀荘の娘で知識派の染谷まこ(山田杏奈)。
「この5人で全国に行くんだ!」
――そう、泣いても笑っても、これが最後。
しかし、そんな彼女の前に、常識では考えられない才能を持った恐ろしい“怪物”が立ちはだかる……。
予告編
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思ったより完全にテレビシリーズの延長になっていて、人間関係も出来上がっている状態からのスタート。とはいえ置いてけぼりにならないような配慮、悪くいえば過剰な説明のお陰ですんなり入り込めるようになっている。つか、わかるもわからないもないような内容で、本編109分の間、およそ90分くらいは対局シーンになっている。ビビる。対局の中にドラマがあるのだが、まさかここまで日常シーンを廃してくるとは思わなかった。
正直、強くなる為の練習シーンや、いわゆる部活モノとしての日常シーンが欲しかったところだったのだけど、そのあたりはテレビドラマにすべて任せてしまっているようで、あわよくば入浴シーンなどと考えていた俺は結構がっかりしていた。
県大会。予選は当然のように勝つためカット。ほぼ決勝の模様が描かれるのだけど、前半はつまらなくてつまらなくて仕様がなかった。この手の作品にはどうしてもキテレツさであるとか歪さであるとか、つまるところ珍品見たさといった部分がどうしてもあるので、普通というには無理があり、かといってぶっ飛んだ面白さがあるわけでもなく淡々と進んでゆく対局、この手の作品に重厚さを求めるのもお門違いだが、とってつけたような薄っぺらなドラマ性にしたって女の子の可愛さでカバー出来ていればまだよかったのだけど、それすら危うい状態になっているのは基本的に女の子の所為ではなく演出家が女の子を可愛く撮ることに力を注いでいない所為だろうと思う。勿体ない。
また、ラスボスに当たる人物のキャラ設定も好きになれない。己の強さにしか拠り所が無く、それが故に孤独というキャラはよくあるが、その設定自体は嫌いではなく、寧ろ好きなのだけど、このような性質をもったキャラクターに狙いすぎなロリキャラを持ってくると言う流れ、最近多すぎませんか。寒くないですか。もうやめませんか。そう思いませんか。思いませんか失礼致しました。ああやりきれない。煮え切らない。そんな前半、誰が吹き飛ばすの。誰が吹き飛ばしてくれようか。つか、吹き飛ばしてくれんのか。もはやこれまでと諦めかけたとき、やっぱヒロイン。団体戦の大将ですから、出てくんの遅いんだ。
宮永咲を演じているのは浜辺美波という、芸名感が凄すぎる女優さんで、僕は今作で初めてそのお顔を謁見させて頂きましたが、群を抜いて可愛い。カワユス。カワユスを出しまくっておられる。もの凄く美形と言うわけではなく、びしょ濡れの犬のような可愛さを感じる。最高だ。
これは原作漫画によるところだが、まず咲ちゃんの得意な役が嶺上開花という壊れっぷりと突き抜けた馬鹿馬鹿しさ。卓上に木霊するカンの号令。もう一個カン、もう一個カンでハイ三槓子、あーコレコレ、コレなのよ〜でエクスタシー。股間に来ないタイプの勃起。隆々と。山の頂きに咲く花ですから。嶺上開花。祝福されているなあ。神様に。麻雀の神様に。
反対にラスボスの得意役は海底撈月。ラスヅモあがりに付く役で、海の底に浮かび上がる満月をすくい取る意味があるそうな。山の頂きvs海の底ですよ。これはアがる。アがるねえ。ラスボスのキャラ造形はやっぱり好きになれないですけど。
なんやかんやあって。勝ちます。結果言うと。そしてこの勝ち方が本当に素晴らしくて、ちょっと泣いてしまいました。
対局は熾烈を極め、ラスボスの属する高校が大幅なリードを保ったままオーラスまでもつれ込んで行くのですが、その過程でラスボスが、強さのみを拠り所に闘っている多くのキャラクターがそうであるように、宮永咲を始めとした対局者の「楽しんで打つ」という姿勢に絆されていく。王道。そして最後の打牌で選択を強いられる。これまで打牌に関して悩み選択するということすらしてこなかった彼女、感覚だけで打っていて勝っちゃう、勝ち続けて来ちゃった子が、宮永咲という化け物を前にして選択を強いられるわけです。これまで通り感覚で打つか、化け物の化け物性を認め、感覚に反した牌を打つか。結局彼女は負けによる救済をも期待しながら自分の感覚を信じて打牌、結果、大明槓からのもう一個カン、もう一個カンで嶺上開花で数え役満責任払いで大勝利。宮永咲からは後光が差し、卓上には桜の花が舞い上がるという外連味たっぷりな演出で盛り上げてくれる。
最後、嶺上のアガリ牌を振りかぶるときに、彼女の正体がわかったというか。見えたんですね。釈迦の影が。彼女、釈迦だったのだ。
宮永咲の後ろにコレが見えた。重なった。桜の花ではなく蓮の花が舞い、釈迦の誕生を祝福していた。彼女は麻雀の神様に祝福された少女ではなく、彼女が麻雀のブッダだったのだ。気付くと手を合わせて目頭を熱くしていた。そして彼女に帰依しようと心底から思った。
実際に、彼女は彼女の麻雀によってラスボスを救済している。今後も彼女は彼女の麻雀によって衆生に救済を与えて行くことだろう。『咲 -Saki-』は仏典だったのだ。共に劇場で鑑賞していた方々に、釈迦の光は届いただろうか。
ビールと宇宙人と風呂
ああビールだ。美味い。ありがたい。まだ暖かい焼き鳥の盛り合わせと明太子入りのポテトサラダ、突き出しの大根おろしをつつきながら荻窪。俺は痛風なのだ。そのように医者に宣告されてから一向に症状が出ないので最近はすっかり気を許してビール、海老、蟹、どんと来いの構えでプリン体を摂取し続けている。酔っぱらう。酒に弱い。饒舌であることを潔しとする。心地がいい。心地がいいまま終電がなくなり、それじゃあ朝まで、なんつってガールズバー。選択肢が死んでいるなあ。金を払って女の子とヘラヘラする。照れ隠しでカラオケを入れたりする愚行。どうも酔っぱらっていると甘え上戸になっていけない。ビールでは記憶を飛ばせないので、気色の悪い己が後々ハッキリと思い出されてやりきれない。キショい。うわキッショ!と翌日突然叫んだりする。しかし飲んでいるときにはお構い無しで、指で宇宙人の顔を作るなどして楽しませているつもりになっており、ああなんか歌って頂戴かわいいやつ、ああ良い、良いなあ、可愛いなあ、ところでこの宇宙人どう思う、えっえっえっ、はいはい、僕はデイドリームビリーバーそんで彼女はクイーン、ハートのクイーン、キング、エース、ロイヤルストレートフラッシュ、君はハートのロイヤルストレートフラッシュ、眩しくてチャウ・シンチー、ハットしてキャット、可愛いねえ21歳、岡山出身、日本で一番晴れが多い県だ、うわー良いなあ、良さが出ているなあ、ところでこの宇宙人を見て。そのようなありようがそのようなのだ。アルコール。1時間経ちしっかり延長を撥ね除ける英断を下す頭をぶら下げているのがまた辛く、まだ始発まで1時間少々あるのでカプセルホテルに向かい、連れと共にどうしますか、風呂オンリーでいいですかの相談をしつつ受付の対応の素晴らしさに感心している。誠実。酔っぱらいに対しても誠実にご案内を受けさせて頂き、接客よなあと思う。入浴。普段湯を張らない生活をしているため、時々銭湯等に行くとここぞとばかりに長風呂してしまう。寝溜めをする奴は馬鹿だと思っていたが、風呂溜めする俺も大差ない。当然のこと湯中りし、もうこの世の終わりということで宿泊を決意。替えの下着や靴下が陳列されているガラスケースの中、木製のトカゲの置物が埃を被っており、売り物なのかと訊くと売り物だと申すのでこれを購入。商品裏のシールをみると500円の記載があったが、なぜか300円で譲ってもらう。ありがたい。接客よなあ。時間を奪われたカプセル内で夜を明かし、二度寝を数回繰り返した後、11時前頃に完全に目を覚ます。さてこの話、何が面白いのでしょうか?
2017年1月映画館で観た新作映画
1月映画館で観た新作映画
1日『ドント・ブリーズ』
2日『アズミ・ハルコは行方不明』
4日『この世界の片隅に』(4回目)
7日『この世界の片隅に』(5回目)
8日『人魚姫』
8日『この世界の片隅に』(6回目)
9日『ソーセージ・パーティー』
21日『太陽の下で』
21日『沈黙 サイレンス』
22日『ザ・コンサルタント』
27日『ドクター・ストレンジ IMAX3D』
27日『スノーデン』
28日『マグニフィセント・セブン』
28日『ドラゴン×マッハ』
1月はもの凄いラインナップで、年間ベスト級の作品ばかり。
中で特に印象に残った作品をキリよく三本。鑑賞順に。
・ドント・ブリーズ
公開自体は2016年12月ですが未見だったので。
面白すぎてどうにかなりそうだった。僕が映画に求めている要素をぎゅうぎゅうに詰め込んでてくれている。感謝。
沈黙がとても効果的に使われる作品だったので、映画館で観ておいて本当によかった。
・人魚姫
鬼才・チャウ・シンチーが放つメガヒットファンタジー『人魚姫』予告編
今年はチャウ・シンチーに年賀状を出さなければならないレベルの大傑作。
ベタにベタを重ねるような展開で、それでも大爆笑させられてしまうテンポの良さと映像の力。改めてチャウ・シンチーは抜群に映画撮るの上手いと思った一作。相変わらずバイオレンス描写も恐ろしくしっかり作り上げて来ている。
あまり公開規模云々に関して意見を持つことはないのだが、さすがにチャウ・シンチーの新作、しかもアジア歴代一位の興行収入の記録を作った今作が、当初都内で一館のみの上映と言うのはビビった。つか呆れた。
・ドクター・ストレンジ
丁度半年くらい前、予告編を観てその映像にビックリさせられて、かなり期待をかけていたのだけど、期待以上の出来だった。
映像、ここまで来てんのか。そしてここまで観させてくれんのか。という驚きがしっかり2時間持続する。すげえ。目の前で展開される映像の凄まじさだけで泣いてしまった。涙以外の汁も出ていた気がする。身体中から。
その他、北朝鮮を題材にしたドキュメンタリー『太陽の下で』もアイドル映画的側面があって素晴らしかったし、スコセッシの新作『沈黙 サイレンス』も文句なく面白い。己の無知を否応なく自覚させられ、ジョセフ・ゴードン=レヴィットはやっぱりとんでもない役者だったということを改めて感じさせられた『スノーデン』もよく出来ていて、大好きなアクション映画『SPL 狼よ静かに死ね』の一応の続編、『ドラゴン×マッハ』なんかも最高だった。
いやもう、ほとんど最高すぎて3本選ぶのも大変な程。反対に『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』は良い珍作。ポジティブなワースト映画。
観た映画が面白い作品ばかりだった為、あまり食べ残した印象こそない月だったけれど、まだ観れていないところで『牝猫たち』『疾風スプリンター』『キセキ ーあの日のソビトー』あたりは早いところ観に行きたい。年明けて間もないと言うのに、早くも追っ付かない状況になってきている。困った。
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2月はいよいよ待ちに待った『ラ・ラ・ランド』が公開される他、久しぶりにヴァンダムがスクリーンで拝める『キックボクサー・リジェネレーション』をはじめ、名物企画「未体験ゾーンの映画たち」からも面白そうな映画がちらほら。いい感じに香ばしい匂いがしている実写版『咲 Saki』も楽しみで仕方ない。
スマホから雑文
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