同じ靴を履いてる

生活について

内村光良と手首と足首

ウッチャンナンチャンというコンビがある。そのコンビの片割れに、内村光良という男がいる。ウッチャンナンチャンウッチャンを担当されている。わざわざ紹介するまでもない。めちゃくちゃテレビに出ている。めちゃくちゃ売れている芸人である。その内村光良冠番組に、内村さまぁ〜ずという番組がある。テレビでは東京MX系列で放映しており、Amazonプライムで隔週にて更新されている。その番組内、2011年収録の#122、バナナマンがゲストの回にて、ウッチャンが手首を痛めるくだりがある。フラフープを前方に放り、それを倒すことなく輪の中をスムースにくぐることが出来れば成功という企画の中で、ウッチャンが手を着いた時に手首を捻り痛めたのであるが、その場にいるさまぁ〜ずバナナマン両コンビの悪ノリで、手首を痛めたウッチャンを繰り返しチャレンジさせ、さらに痛めつけるというおもしろが発動されている。次の収録時にも手首は治っておらず、1ヶ月後、1年後、3年後、5年後の収録時にも手首の違和感が残り続けており、一生物の怪我を負わされたと、定期的にその悪ノリのVTRが流れるのである。

そんなわけがあるのかと思う。特に骨が折れているわけでもなく、収録後医者にかかり適切な治療を受けているのにも拘わらず、果たして数年にわたり、そしておそらく一生にわたり、手首に違和感が残り続けるなどということがあるものなのか。勿論聞いたことはある。雨の日になると古傷が痛む、冬の寒い日には腰が痛む、そのような話は聞いたことはあるし、そのような現象に悩まされている人間も見たことがある。ただし私が見たことがある人間は押し並べて持病を患っていたり、老人と言える年齢であったりした。ウッチャンはどうか。決して老人と言える年齢ではなく、当該の怪我にしても画面越しで見ている限り、その程度は高が知れている。それでも違和感が残り続け、ボールを投げる際は手首のスナップゼロのフォームにて投球を行なっている。

そんなわけがあるのかと思っていた俺はしかし、ここ1ヶ月ほど胡座をかくことが出来なくなっている。厳密に言えば右の脚を下にして胡座をかくことが出来なくなっている。何故か。痛めたからである。捻ったからである。胡座をかき足首が床に接地すると当該の箇所が未だに痛み、一向に治ろうという気配を感じられずにいる。急な方向転換、踵を返すという表現がしっくりくるようなターン、それを行う際に於いても、これははっきりと激痛が走り顔をしかめる。場合によっては小さく呻いたりする始末である。

そんなに大きな怪我になるはずがなかった。偶にある次の一歩のミスである。右脚を出し、左脚を出す。それを繰り返し歩く。歩ける。この当たり前体操が当たり前に行えない場合がある。左脚を出し、右脚を出す際に、その着地がうまく決まらず、るんっ、となった。るんっ、となり内側に曲がった。これまでも経験していることである。但しせいぜいがその日1日脚が痛む程度で、数日にわたり痛み続けるということはなかった。まして既に1ヶ月が経つ。そんなわけがない。いやあるのだ。現に胡座をかけずにいる俺は、確かにここに在る。

人生、そういったフェーズに突入しているのかの感。未だ20代の俺は、既にひとつ階段を昇ろうとしているのだろうか。早過ぎないか。生き急ぎ過ぎていないか右脚。そんなわけないよウッチャン、あなたはまだ一時の怪我が一生に残るほどの年齢ではないよと嘯いていた俺は、これから一生右脚を下に胡座をかくことが出来ないのか。ウッチャンあなたはもう一生手首のスナップを効かせてボールを放ることは出来ないのか。春の夜のぬるさが勿体無く、一駅余計に歩いてみたりする俺の脚。桜もう葉をつけ始めていて、鼻孔に新しい季節の匂いが広がる。胡座をかけずに俺は立膝でキーボードを叩いている。内村さまぁ〜ずAmazonプライムにて好評配信中。刮目せよ。