2017年1月映画館で観た新作映画
1月映画館で観た新作映画
1日『ドント・ブリーズ』
2日『アズミ・ハルコは行方不明』
4日『この世界の片隅に』(4回目)
7日『この世界の片隅に』(5回目)
8日『人魚姫』
8日『この世界の片隅に』(6回目)
9日『ソーセージ・パーティー』
21日『太陽の下で』
21日『沈黙 サイレンス』
22日『ザ・コンサルタント』
27日『ドクター・ストレンジ IMAX3D』
27日『スノーデン』
28日『マグニフィセント・セブン』
28日『ドラゴン×マッハ』
1月はもの凄いラインナップで、年間ベスト級の作品ばかり。
中で特に印象に残った作品をキリよく三本。鑑賞順に。
・ドント・ブリーズ
公開自体は2016年12月ですが未見だったので。
面白すぎてどうにかなりそうだった。僕が映画に求めている要素をぎゅうぎゅうに詰め込んでてくれている。感謝。
沈黙がとても効果的に使われる作品だったので、映画館で観ておいて本当によかった。
・人魚姫
鬼才・チャウ・シンチーが放つメガヒットファンタジー『人魚姫』予告編
今年はチャウ・シンチーに年賀状を出さなければならないレベルの大傑作。
ベタにベタを重ねるような展開で、それでも大爆笑させられてしまうテンポの良さと映像の力。改めてチャウ・シンチーは抜群に映画撮るの上手いと思った一作。相変わらずバイオレンス描写も恐ろしくしっかり作り上げて来ている。
あまり公開規模云々に関して意見を持つことはないのだが、さすがにチャウ・シンチーの新作、しかもアジア歴代一位の興行収入の記録を作った今作が、当初都内で一館のみの上映と言うのはビビった。つか呆れた。
・ドクター・ストレンジ
丁度半年くらい前、予告編を観てその映像にビックリさせられて、かなり期待をかけていたのだけど、期待以上の出来だった。
映像、ここまで来てんのか。そしてここまで観させてくれんのか。という驚きがしっかり2時間持続する。すげえ。目の前で展開される映像の凄まじさだけで泣いてしまった。涙以外の汁も出ていた気がする。身体中から。
その他、北朝鮮を題材にしたドキュメンタリー『太陽の下で』もアイドル映画的側面があって素晴らしかったし、スコセッシの新作『沈黙 サイレンス』も文句なく面白い。己の無知を否応なく自覚させられ、ジョセフ・ゴードン=レヴィットはやっぱりとんでもない役者だったということを改めて感じさせられた『スノーデン』もよく出来ていて、大好きなアクション映画『SPL 狼よ静かに死ね』の一応の続編、『ドラゴン×マッハ』なんかも最高だった。
いやもう、ほとんど最高すぎて3本選ぶのも大変な程。反対に『ぼくは明日、昨日のきみとデートする』は良い珍作。ポジティブなワースト映画。
観た映画が面白い作品ばかりだった為、あまり食べ残した印象こそない月だったけれど、まだ観れていないところで『牝猫たち』『疾風スプリンター』『キセキ ーあの日のソビトー』あたりは早いところ観に行きたい。年明けて間もないと言うのに、早くも追っ付かない状況になってきている。困った。
※
2月はいよいよ待ちに待った『ラ・ラ・ランド』が公開される他、久しぶりにヴァンダムがスクリーンで拝める『キックボクサー・リジェネレーション』をはじめ、名物企画「未体験ゾーンの映画たち」からも面白そうな映画がちらほら。いい感じに香ばしい匂いがしている実写版『咲 Saki』も楽しみで仕方ない。
スマホから雑文
◼︎初めてスマホから更新する。
シネマロサと若者と世界平和
街はバレンタインの方向に舵を切っている。一方で未だ正月気分を引きずったまま新春初売りセールなどと言いつつ店外にて声を張り客を喚ばう愚か者の使いが居る。正月とは一体なんだったのかのスレッドがもう3スレ目に突入しようというのに。
池袋に行った。と書いてみて、池袋に行ったとはどういうことだろうと感じてしまう。例えば地方に住んでいる人間が観光として確固たる目的を持ち池袋に行ったとあれば、それは納得がいくのだが、東京に住んでいる身としては生活圏内であるため、行った、という言葉がどうも大仰に感じてしまう。つか、行ったという報告をわざわざここに書くほどではないな、つー。
何しに行ったんだ。映画観に行ったんで。久々のシネマロサ、小学校の頃はよく家族で映画を観に行った。シネマロサ、変わらずにシネマロサで安心する。シネコンにあるこれぞ映画館という趣もあれば、小さい映画館にあるこれぞ映画館という趣もある。『ソーセージ・パーティ』という映画を観た。
帰りしな、西口駅前で、いかにもチェスターコートを着てスキニーパンツを穿いていそうな二十歳そこそこと見える若い男二人組が、やはりチェスターコートを着てスキニーパンツを穿いてギターを弾きながら世界平和について歌を歌い、奏でていた。世界中の人が手を取り合って、幸福について語り合えたらこれ幸福だよなあ、そう思わへん? と、そのようなことをビブラートを効かせ。嫌味でも何でもなく、なんでそんなデカイことを歌えるのか不思議だった。自分のことで手一杯な俺は。その自分のことが延いては世界に通じているという考えはわからなくもないが、二十歳そこそこの、つまり自分と大体同世代の若年者が世界平和について真面目に、高らかに、何らの羞恥も滑稽さも感じられない顔と雰囲気とテンションで歌っている、歌い上げてしまっている現場を目撃し、強い、と思った。つか、言った。独りごちた。そもそも路上にてギターをかき鳴らしつつ歌うという尋常ではない状況に酒の力も借りずに是の判子を捺印し、剰え笑顔、楽しんでしまっている風のその精神力の強靭さは何処から賜ったのか。強い。なんつー強さよ。平和になれよ世界、彼らのために。
2017年。未だ違和感がある。本日は水の美味さに驚愕するなどした。レペゼン20代、世界平和はここから生まれる。
挨拶と恥と挨拶
直に三が日が終わる。少年期より正月のどこか浮ついた感じが苦手だった。そもそも明けましておめでとうという挨拶がしっくりこない。平素は気さくな間柄であるにも拘らず、妙にかしこまってするあの挨拶がどうにも気恥ずかしい。皆「あけましておめでとう」に気恥ずかしさを感じているのだろうか。あらゆることに於いて渦中に在る人間は、己から、或は己等から発せられる恥に気付きにくい。あけましておめでとうの渦はあまりに巨大すぎる。皆、晴れやかな顔をして当たりまえのように例の挨拶を実行している。その晴れやかな顔は、当たりまえのように発せられる言葉は、本心からなのか。渦に入れなかった俺はせめてもの抵抗として、年が明けた瞬間家を飛び出して道路の中心で立ちションをするという愚行を高校の時分繰り返していた。あけましておめでとうに恥を感じてしまう以上、それに勝る恥であけおめ恥(あけおめち)を克服しようという、メインレースで摩った金を最終レースで取り返そうともがく競馬場で新聞を穴が空くほど凝視している親父とも似た巫山戯た精神構造のもとで行われた立ちションだったが、まったく何の救いにもならないことに気付き止した。もしも何かの拍子でこの記事を読んでいる中高生が在れば、こんな人間にならない為にも、あけましておめでとうの渦中に飛び込むべきであるとアドバイスしたい。なるはやで。あとクスリとかやったら駄目。
大晦日。侘びも寂びも存在しない部屋で十数年ぶりに手塚治虫の『火の鳥』を読みながら、ふと時計に目をやると零時を回っていた。どうやら2017年になったらしいという手応えのない事実。このような正月の迎え方があってもいい。明日は早起きしようと早めに床に就く。その夜、腰を痛めている祖母があまりにも辛そうにキャバクラで働いているのを客として目撃し、こんなところは辞めろと説得するも「お金がないのよおおお」と号泣し崩れ落ちる彼女をこちらも号泣しながら抱きとめるという地獄のような夢を見て、久しぶりに起床後に泣く。日付変わって元日に見た夢は初夢とは呼ばないという説が有力らしいので、この夢はノーカンにする。しかし気分が良いものではない。今年の祖母の容態が心配である。現状、腰を痛めたという報告はない。
年末は一泊で伊勢神宮まで簡素な旅行に行ったりもしたが、年が明けてからはひたすらだらだらしている。先日、はじめてラインのスタンプをいくつか買ってみて、中で「しりあがり寿のオメデタすぎるスタンプ」という正月ピンポイントで使えるスタンプを購入していたので、スパムのように知人に送るなどした、と言えばどれくらいだらけ切った正月を送っているか想像出来るだろうか。朝、映画を観に新宿へ向かい、少しぶらついた後帰宅し、だらだらと過ごし、だらだらに飽きたところで何か為さねばという衝動に突き動かされるように、近くの映画館のレイトショーに向かうという日が続いている。最近、衝動の矛先が映画館にしか向いておらず、端的にヤバい。
とにかく。年が明け2017年になったという事実は確かな情報らしい。生き抜く。願わくば充実させる。
末筆ながら、皆さんあけましておめでとうございます。共に生き抜きましょう。
2016年映画ベストテン&ワースト
今年映画館で観た新作映画80本程度。ここ数年は大体こんなもんだと思います。そんなわけで早速。
ベスト
10位 青空エール
映画としてはテンポも悪いし、三木監督の演出はあんまり好きになれないことも多くて、文句を言い出したら切りがない映画なのだけど、どうしても嫌いになれないというか、寧ろ好き。応援する側の方にフォーカスしてはなしが進んで行くので、頑張れフェチの自分には響く。あと、間違いなく映画雑誌等でランキング入りするタイプの作品ではないため、なんとなくここに入れてあげたかった、という気持ちもある。
9位 ロスト・バケーション
丁度シネコンでかかっているような公開規模が大きめの洋画がどうにも煮え切らない作品が立て続いていた時期で、それを吹き飛ばしてくれるような勢いに寄り切られた格好。ジャウム・コレット=セラ監督は毎回それなりに面白い映画を撮ってくれるものの、『エスター』以降ドンピシャでハマった作品がなかったので、今作は久々のヒット。いやこの部分いる? というくだりがあったりもするのだけど、それを補って余りある圧倒的なパワープレイと綿密に練られたグラフィカルな演出が素晴らしく、劇中、最高のタイミングで繰り出される最高の「ファックユー」で完全にエクスタシー。痛みもハッキリ伝わってくる生々しい映像、ビックリ演出もたまらない。映画館でびっくりしすぎて何度も椅子から飛び跳ねてしまった。
8位 イット・フォローズ
対象者をどこまでも追いつめ殺戮する”それ”。セックスをすることで”それ”がうつり、セックスをすることで”それ”をうつすことができる。この設定がめちゃくちゃ面白く、しかしアイディア一発で終わらせない奥行きもあった。いろいろと考察しがいがある。しかしそんなことより”それ”が怖くて怖くて仕方がない。でも笑っちゃうという絶妙なバランス。”それ”の追尾速度が走ったらとりあえずやり過ごせる程度、というもの映画を盛り上げる要素としてプラスに働いていた。不穏なBGMは確かに良かったが、多少うるさすぎるのはご愛嬌。監督のデヴィッド・ロバート・ミッチェルは今作が監督二作目で年齢も四十そこそこ。早く次作が観たい。
7位 シン・ゴジラ
わざわざ俺が、という気持ちもあり入れようか迷ったものの、やっぱり相当興奮させられたので。特に何も言うことはないくらい語り尽くされている今作だが決して優等生タイプの映画ではなく、にも拘らずここまで評価されている。庵野お前。
6位 アイアムアヒーロー
ここ数年の日本映画で、ハリウッド映画と同じような土俵に立ちつつ、ここまでしっかり迫力があって面白かった映画は記憶にない。まずアクション映画として一級の出来で、その上で銃社会の国ではないゾンビ映画としてのオリジナリティも確保出来ているすごさ。正直舐めてかかっていたので叩きのめされた。
5位 何者
この映画に対してこんなことを言うのはどうなんだろうという気持ちもありながら、「一周まわって」すごく面白かった。今を輝く若手俳優・女優の演技のアンサンブルは見物で、映画としての面白さがグンと増している。特に佐藤健は白眉。正直あまり好きな俳優ではなかったが、今作では完全にやられた。目で語る芝居の凄みを感じる。反面、せっかく役者陣が表情で語る素晴らしい演技を見せているのに、やや説明的すぎる台詞回しや展開も多く見られその点は残念だった。しかしそんなことは些事であり、みんなきちんと追い込まれたり、頑張ったりしていて、どこをどう切り込むかによって大分見え方が変わってくる映画であることには間違いないが、個人的にはとても好きな映画だった。
平成の菅原文太とでも言えば良いのか、柳楽優弥のスター感が半端じゃない。彼が画面に出ているだけで様になってしまう顔面力と佇まい。冒頭の柳楽優弥の顔面一発でKO。いかにも自主映画上がりという質感の映画で、説明等は大胆に省略されているのだが、そもそもこの映画に対して説明もクソもない。ただ純粋な暴力が描かれており、その純粋な暴力に対して意味規定と解釈で切り刻むネット住民等に対する激烈なカウンターをぶち込んでいる。素晴らしい。ヤバい奴はヤバい奴、暴力は暴力、それ以上でも以下でもない。それを表情で語り切ってしまう柳楽優弥。どうかしている。
3位 貞子vs伽倻子
今年に入った段階では一番期待をかけていた今作。実際観てみたら期待以上で恐れ入った。非常に漫画的なキャラクター配置になっているが、何も文句が出ないほど面白く、かつきちんと怖いところは怖かった。「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ」は今年公開された映画の中でも一二を争う名台詞。ラストもそりゃそうなっちゃうだろ感が突き抜けていて最高。あとは特に『呪怨』シリーズはリアルタイムで観ていたのでこのような映画が作られたことに対する感謝の気持ちもある。どうしても上位に入れたかった。
2位 ヒメアノ〜ル
映画について書こうとするとどうしても核心に触れなければ語り尽くせない部分があるため割愛するが、この森田剛演じる森田という男がしばらく忘れられなかった。今でも思い出す。それくらいなんと言うか、刺さった。森田剛の怪演は言わずもがな。観賞後は「森田お前、どうして!」という気持ち。やるせない。ラスト森田が発するある台詞は涙無しでは語れない。
1位 この世界の片隅に
少しだけこのブログでも書いたが、この映画、一言で言えば奇跡で、現状全国あらゆる箇所で奇跡を目撃出来る状況になっている。喜ばしいことです。大変に。大袈裟ではなく、邦画史上に残る傑作。もう語ることはなにもない。何もかもが完璧であり、完璧が完璧を支えている。個人的に今年の映画館納めはこの作品にする予定。何度でも観れる。
*
と、まあ今年はやはり邦画が大変な当たり年で、ほとんどが邦画という結果。一応理由があって、どうしても近くのシネコンで映画を観ることがほとんどなため、公開規模が小さめの洋画をあまり観れていないという状況がある。来年はもう少し色んな映画館で映画を観に行けたらなあと思う。
また、選外になった作品でも今年は傑作が本当に多くて選ぶのに困った。例を挙げるとまず『ズートピア』。これは相当話題になったのでわざわざ俺が、と言う気持ちもあり選外。他、洋画だとアウシュビッツの悲劇を画期的なアプローチで描いてみせた『サウルの息子』、全編PC画面ではなしが進むのがフレッシュだった『アンフレンデッド』あたりは入れたい気持ちが強かったし、実際『青空エール』なんかよりどう考えても『サウルの息子』の方が映画としての出来は間違いなく上な訳だが、そこはなんとなく退いてもらった。
邦画だと綾野剛がとにかく最高な『リップヴァンウィンクルの花嫁』、高い頑張れ力を誇る『永い言い訳』を筆頭に、サイタマノラッパーでお馴染み入江悠監督『太陽』も良かったし、黒沢清の演出はどうかしてると感じさせられた『クリーピー偽りの隣人』、今年一番の大ヒット作『君の名は』ももちろん良かった。
一応劇場で鑑賞した映画のみを対象にしているので選出こそ出来なかったけれど『ちはやふる』も凄く良かったし、改めて今年は邦画が大当たりだったなあと。良い評判だけ聞いて観に行けなかった作品も多くあったし、来年も引き続き邦画には期待が持てそう。それにしても昨年の『マッドマックス 怒りのデス・ロード』といい今年の『この世界の片隅に』といい、とてつもない傑作がぽんぽん出て来ている最近、逆に来年大丈夫なのかという不安はある。しかし多分、大丈夫なんだろう。
*
ワースト
大変な傑作が公開されている一方で、駄目な作品だってちゃんとある。
ワースト 真田十勇士
心底腹の立つ映画だった。観ていて本当に哀しかったし、憤りを感じたし、残念でならなかった。仮にもものづくりに携わっている方々が、この映画に見られるような志の低さで、虚構自体を題材にした映画を撮っていることが理解出来ない。嘘と真というお話を語る上でもっとも繊細で重要な問題を題材にしているんだから、せめて真面目に映画を作ってくれと思う。コメディ要素を入れるなとかそういう意味でなく、真面目にやってくれ、お願いだから。俺が死んで爆発してしまうから。
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本来ワーストって可愛げがある作品を推したいんです。例えば今年だったら『僕だけがいない街』なんかとても素晴らしい珍作になっていて、これは是非ワーストの称号をあげたいなと思っていたりしたのですが、この『真田十勇士』は本当に腹が立って仕方がなかったので止む無くワースト。他、可愛げがある珍作という意味では『キューティーハニー ティアーズ』という一体誰に望まれて今この時代にキューティーハニーの実写を撮ったのだろうかという誰得映画も素晴らしかった。映画館、オッサンしかいなかったぞ。
やはり見逃している作品も多くあるので来年はもう少し観に行けたらと思う一方、最近の生活だとこれ以上行くと本当に他のことに回す時間が少なくなってしまうので、まず生活基盤を変えた方がいいなという気持ちの方が強い。
それからいつも思うこと。世の中良い映画が公開されすぎじゃいないですか?
それでは。